2002/12/20　金曜日

幸福な家族

出会い系を利用しているひとって、特に家庭に不満があるわけでもなくむしろ円満な家庭を築いているひとがいたりするのにびっくりしてしまう。
時にそんな人妻を演じてみたりもするけれど、どことなくしっくりとこない。
以前出会ったひとを思い出すからかもしれない。

そのひとの家庭は円満で、良き夫良き父親。そして奥さんもよくできたひとらしい。結婚しても恋人のような夫婦で、時々ふたりだけでデートするのだという。
瑞穂は、それを「ふーん(-_- )」と聞いていた。出会い系で知り合ったそのひとは、瑞穂以外に定期的に逢瀬を重ねる人妻がいるという。その人妻もやはり円満な家庭の主婦。ご主人とのいさかいもなく、家に戻れば母と妻の顔をしっかり勤め上げてるという。

「そんなに幸せな家庭があって何故出会い系で遊んでるの？」

そう相手に聞いたことがある。答えは明快だった。

「一度きりしかない人生だから、父親とか夫だけでない、自分だけの時間が欲しいから」

理屈としてはかなってるのかもしれないけど、どうしても納得いかない答えだった。
そんなことも手伝ってか、なんとなく自然消滅的に別れてしまった。

それから数年後、偶然の再会をした。
といっても、直接ではなくあるものを目にしたことがきっかけだった。

あの出会いから離婚した瑞穂は、偶然にもそのひとの住む近くの街に引っ越すことになり、いつか出会ってしまうかも、という不安はありながらも何事もなく過ごしていた。少しずつ街にも慣れ始めていた。
ある日新聞の広告を見ていて手が止まった。

あのひとの写真…しかも家族揃って。

地元大型スーパーのお店の広告に親子モデルとして一般公募の中から採用されたらしく、家族揃って満面の笑みで大きく掲載されていた。
「出会い系やっててこんな目立つこと…」
例の人妻と今でも続いてるのだろうか。その人妻が見るかも、なんて不安はないのかな。それともむしろ率先して見せてたのかもしれない。お互いの家庭のことを話しているような素振りだったから。

今でも出会い系利用して男として人生謳歌してるのかな、あのひと。
もしかしたらサイトの中ですれ違ってるのかもしれない。