トライアングル・ラヴ

瑞穂がどれだけ淋しがりか、思い知らされた遠距離恋愛。
その時の…お話。

いつものピッチ出会い系サイトで穏やかに話ができる相手が欲しくていろいろ検索してみる。

彼氏・相談相手・友達、すべて引き受けます。たれぱんだに似ています。

一風変わった自己紹介に興味を持ちメールを送ってみる。
５歳年下だけど、そんなことも気にしないくらいごく自然な感覚で話していた。

そのひとの登録地域は瑞穂の住んでいる場所の隣接地域。
後からわかったことだけど、仕事の関係でその場所には殆ど住んでいないと云う。全国各地を出張で点々と回るということだった。
知り合ってすぐは淋しくなかった。電話で長く話すこともあったし、頻繁にメールもできてた。
それに救われてた。

実際に会えたのは知り合ってから２ヵ月後。
長期出張からやっと地元に帰ってきたほんの束の間の時間をふたりでやりくりして短い時間だけれどデートを重ねた。
ふたりともカラオケが好きで、特に相手はたくさんのＣＤを借りてきては研究するくらい歌が好きでそして上手だった。

イッパイ素敵な歌を歌ってくれた。
そのひとにとっては、瑞穂が初めて本気で好きになった女性だった。
「好き」という気持ちを歌に託してくれた。確かカシオペアの曲。
想いをこめた歌に胸が熱くなる。

穏やかで暖かい時の流れ。
あのひとは瑞穂にたくさんの愛を注いでくれた。
でも、またすぐに出張の日が近づいていた。
次回は東北地方。一度行ってしまうと３ヶ月は帰れないという。
待っているつもりだった。いられるつもりだった。

同時進行でメールしている男性がいた。
実はそのひとの同僚で、瑞穂とのメールのやり取りをいつも横で見ていたのだという。
電話で話した時に、その同僚とも話したことがある。もちろんメールも公認。
同僚は11歳年下の当時24歳。サッカーが好きで自分でもプレイするのだという。
初めて３人で電話で話した時に、恥ずかしそうにその時のことを話してくれたことが印象的だった。
歳の差もあってか、可愛いなと思っていたことは事実。
でも、まだＬｏｖｅではなかった。

「たれぱんだ」との別れのきっかけは突然だった。
一週間後に出張に出かけるというある日、喧嘩になってしまった。
甘えたい、ずっと近くにいたいと願う瑞穂と束縛されるのを嫌う自由人の相手。
淋しがり甘えたがりの瑞穂の目の前にぶら下がる、最低３ヶ月は近くにいないという状況。
あれだけ我慢してやっと会えたのに、またすぐ遠くに行ってしまう淋しさ。
それをわかってくれない、わかろうとしない相手。
その淋しさ、悔しさを同僚にメールでぶつけた。同じ仕事の同僚に、その苦しさをぶつけることは本当はとても残酷なことなのだけれど、同僚しか言える相手がいなかった。

その会話を経て、急激に同僚との距離が縮まった。
「きっと会おうね」と約束するようになった。電話も直接話し始めた。
ふと気になって、初めて電話で話した時のことを聞いてみた。

「実は瑞穂とメール始めてしばらくした頃から瑞穂のことが気になってて、
初めて話した時は本当に緊張してた。
いつも○○さんと瑞穂がメールしてるの横で見てて、こんなひとが彼女だったらと思ってた。
まさかほんとにこんなことになるなんて信じられない」

知らなかった。その想いにはまったく気づかなかった。
そう思ってくれるひとを大切にしよう。瑞穂も好きなひとだから。

会えるまでの時間は長かった。
出張が思いのほか長引き、そろそろ帰れるという期待も何度か覆された。
知り合ってから２ヶ月弱で帰る予定が３ヶ月に伸びた。やっと会えたのは12月初め。
たれぱんだのあのひとは、東北地方に飛び立っていた。

長い出張から地元に帰ってきても思うように会えないことに変わりはなく、次の仕事は出張ではなく地元だけれど、時間が中途半端な２交替制。
おまけに自宅はメールしようにも電波が届きにくい地域。かなりのストレスだった。

瑞穂のワガママが出てしまった。地元に帰ってきたのに思うように会えないことに対して。
もっと頻繁に会いたいとすねた。
会いに行きたくても、片道だけで軽く２時間はかかる距離。同じ県内なのに。
近くにいるはずなのに、まるで遠距離恋愛をしてるみたい。そう思い始めた。
一度感じ始めた淋しさは止まることなく膨らんでゆく。結局淋しさに負けてしまった。

自然消滅。

もっとオトナになればよかったと後悔している。