転機



翌日、重い身体と心を引きずって出社した結以を見つけて、同僚の愛美（まなみ）が話しかけた。幸いロッカールームには誰もいない。

「どうだった昨日は？その様子だと、まさか…」
「当たり。今度こそは大丈夫だと思ったんだけどな。見事に電話もメールも拒否られたよ。私がブスなのもだけど、女って40近くなると女として見てもらえないのかな。ほんと、今回は完全にやられた気分」
「そんなこと言ったら、私はどうすればいいのよ結以。大輝だっているのに」
少々むっとした顔で愛美が言った。もうすぐ40を迎える結以に対し、愛美は47歳、６年前に出会い系サイトで知り合った27歳の大輝と同棲している。
「そうだったねごめん。愛美さんは大輝がいるからいいよね。私はもうダメかな」
「まあ仕事終わったら聞くからさ、また亜美と三人で密会しない？」

仕事帰り、仲のよい愛美と同僚の亜美とでお茶をしながら普段職場では話せない秘密を語ることを、ふざけて「密会」と呼んでいた。
彼氏のこと、職場の上司の愚痴、出会い系のこと、様々なことを話せる仲であり、三人揃って好奇心から同じ出会い系サイトに登録した間柄でもある。結以だけが、どうにも新しい出会いを掴めずにいた。

「さあ、今日も頑張りますか！」

制服に着替えたふたりは、ブーツをパンプスに履き替えて職場に向かった。




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