貶す男

お付き合いしてたひとに別れを告げ、淋しさを感じていた私はサイトにアクセスし、恋人募集をかけた。
真面目に付き合いたいのでフリーであること、同じ市内に住んでることが条件と書いた。数日して、同じ考えのひとからメールが来た。

確かに条件通りだけど、ひとつだけ違っていたのは県外からだったこと。ただ２ヶ月後に転勤でそちらに行くから仲良くして欲しい、ということだった。
正直迷った。私は淋しがりだし、遠距離恋愛の辛さも経験してるからたとえ二月だけでも我慢できるんだろうかと。でも実はフリーで真面目に付き合いたいというひとにはなかなか巡り会えない。
電話で話してみたいというので、こちらから非通知でかけてみた。

電話の声で気に入ってくれたらしい。今すぐにでも会いたいと言ってきた。でも私は容姿に自信がないと伝えると、一旦電話を切って写メを送って欲しいと言われた。断られるだろうなと、ダメ元で送ってみた。

頃合いを見て再度電話をしてみる。
「可愛いじゃん！早く会おうよ！」と相手は乗り気。「でも多分詐欺写メだから…」とテンションの低い私に相手は続ける。
「そんなことないって！俺金持ちだから、付き合ったら何でも援助してあげるよ。エステにも通わせてあげるし、働かなくてもいいし。綺麗になりたいでしょ？新幹線代出すから、明日泊まり掛けで会いに来てよ」
泊まり掛け？今日知り合ったばかりなのに？子供もいるから、気軽に家空けられないよ？と訝ると「彼氏と子供、どっちが大切なん？」と凄まれた。

信じられない。
彼氏も子供もどちらも大切。でもまだ知り合ったばかりのひとに言われたくない。なおもこんこんと、自分と付き合うと金銭的に恵まれるといった話をしてきた。だから明日泊まりに来いと迫る。

なんだか札束で頬を叩かれてるような気がした。自分の力を誇示したいだけ？
うんと首を縦に振らない私に痺れを切らし、それなら他を探してと言われた。こっちから願い下げだ。
電話を切るとそのひとからメール。
「なんで電話くれないの？」
自分から「もういい」って言ったじゃない？おかしなことを言うなとそのまま放置してるとまたメール。
「お前黙ってたけどキモイ。お前なんかに金なんて使えねぇ。消えろ」
またこのパターン。自分の思い通りにならないと、容姿を貶すなんて情けない。確かにブスだけど、それなら最初から可愛いなんて嘘言わないでよ。
程度の低い男に引っ掛からなくて良かったと、自らを慰めるしかなかった。