妻からの伝言

その日もいつものように伝言を頑張っていた。
何人かとやり取りをしていて、返事をするべくプライベートボックスに入っている男性からの返信伝言を聞いていた。

ひとつひとつに返事をしながら聞いていくと突然女性の声。
「？？？」
その内容はこうだった。

「あなたがどんなことをしているか、わかってるんですか？
あなたのしていることは浮気なんですよ。
これ以上うちの主人と付き合うのなら、損害賠償請求をします。よくお考えになってくださいね」

伝言の相手は、今まで順調に伝言のやり取りをしていた男性の妻を名乗っていた。
会員番号も間違いなくその男性のモノ。
どういう経緯でこうなったのかわからないけれど、「損害賠償請求」という言葉にショックを受けた。

慌てて事務局が開くのを待って電話をしてみる。

「落ち着いてくださいね。相手側からは、あなたの身元はわかりませんよ。
直接相手の電話にかけてるわけではないし、ここのコンピュータを介して伝言のやり取りをしているわけなんですから、相手の女性があなたの身元を探って、ということはできませんから。安心してください。
もう心情的にも伝言のやり取りもするのは嫌でしょうから、その方とはやり取りしなくてもいいですよ」

相手の男性がどういう状況に置かれたのか、瑞穂にはわからない。
奥さんに伝言がバレて、その経過で伝言をやり取りしている女性すべてにこの伝言を入れているのかどうかもわからない。
今までこんなことはなくて、女性の声を伝言で聞くのは「誰でもできるお仕事やりませんか？」のフーゾクの仕事の誘いぐらいだったから今回のことはかなり凹んでしまった。

改めてこの仕事のＤａｒｋｎｅｓｓを感じてしまった。