優しさの向こうに

「鳴らない電話」のひとと別れ、しばらくは周りがいたく心配するほど傷心の日々が続いていた。
その淋しさを引きずったまま、掲示板に「別れて淋しい」の書き込みをした。
思ったよりも返事がたくさん来た。

その中にヤツがいた。
隣県在住の独身、5歳年下。
「悲しいことがあったって、どうしたの?」とメールを入れてきてた。
からかうわけでもなく、いたって真面目な態度で瑞穂の話を聞いてくれてた。
「代わりに俺が慰めようか?」なんてメールもなく。

メールや電話でやり取りをしていると、相手に瑞穂と同じモノを感じるようになっていた。
それが何なのかはハッキリわからなかったけれど。

仲良くなるまでに時間はかからなかった。
本当に急接近だった。
むしろ瑞穂よりも相手の方が押してたカンジ。

休みの日に、早朝から家を出て瑞穂に会いに来てくれた。
国道をひたすら走り、子供を保育園に送る瑞穂が来るのを待ってくれてた。

「ミントグリーンのキャミとブラウス、それと白いミニスカで行くね」
その言葉を受けて待っていた相手は同じミントグリーンのポロシャツと黒のジーンズ。
その姿を見てびっくりする瑞穂に「瑞穂さんに合わせたんだよ」とにっこり笑った。
前もって色調を合わせたのかと思うくらい、同じ綺麗な淡いミントグリーンだった。

ダンナには「遠方の友達がこっちに来るから会ってくるね」と嘘をついた。
すると、「相手がクルマで来るなら、ついでに掃除機を買ってきて欲しい」と頼まれてしまった。
んななんで友達と会うのに掃除機買いにいかなきゃならん(汗)
でも掃除機がずっと調子悪かったのは事実。
恐る恐る相手に切り出してみると、意外にもOKの返事。
有難く連れてってもらうことにした。

地元ではイチバン大きい電気屋へ。

「一緒に歩いてたらみんなに新婚さんって思われるかな」

瑞穂が言ったんじゃなくて、相手が言った言葉。
瑞穂が主婦なのは知ってる。それなのに…。
恥ずかしくて照れてしまって、何も言えなくなってしまった。
商品を選び、保証書への住所氏名の記入。手が震えた。
ほんとに新婚夫婦に思われてるのかも、なんてチラと胸をかすめた。

その後ドライブ。
市内中心部をぐるぐる回り、川沿いにクルマを停めた。

瑞穂の住んでいる場所は川のたくさんある街。
いろんな川から眺めるいろんな景色。
曇り空の中、風に吹かれながら先程コンビニで買ったお弁当を一緒に食べる。
食べさせあいこなんかしたりして。こんな感覚ひさしぶり。

相手の胸には手術痕と思える大きな傷があった。
だから医療関係の仕事を選んだのかなとふと思った。

ずっと一緒にいた。
ずっと話していた。
ダンナに対する不満からでなくて、一緒にいるだけでほっとできたから。
でも相手は、メールや電話で想像していた瑞穂と微妙に違うと感じていたらしかった。

会ってからどのくらい経ったのか…。
些細なことで喧嘩になった。
相手の言葉に反発した瑞穂に対して煽ってくる相手。
それに乗ってしまった瑞穂。
また煽る相手。反論する瑞穂。
その繰り返し…。

結局そのまま別れてしまった。

後から気づいた。
優しさとキツさの同居した性格が似てたんだと。

もう戻れない。

そう思っていた。

でも…思いがけないどんでん返しが待っていた。


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